ココ・シャネルも愛した椿の花
椿は、日本では古来より長く人々に親しまれ、今もなお、魅力的な花として愛されています(参照→
古くから愛される日本の花・椿(Camellia Japonica)。しかし、実はフランスにも、椿を愛した人々がいました。
フランスではロマンチックな花

椿は、海外でも人気の高い花で、特にフランスでは「贅沢な」「おしゃれな」「ロマンチックな」イメージを持つ花とされていますが、それにはおそらく、19世紀に発表されたアレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿姫』による影響が大きいようです。
この小説は、作者の実際の体験を元にして書かれたとも言われ、主人公の娼婦マルグリットのモデルとなったのはアレクサンドル・デュマ・フィスの元恋人であるマリー・デュプレシ。肺病を患いながらも自分を華やかに見せたい娼婦が、香りのない椿の花を胸元に差し続けることからいつしか『椿姫』と呼ばれるようになり、ある青年と儚い恋に落ちる話です。主人公が切なく哀しい願いを椿に込めた様子から、椿にはロマンチックなイメージがついています。
1849年に作者自身によって戯曲化された『椿姫』は、翌1850年に上演されて以来、映画やドラマ、オペラ、バレエなど、現代でも多くの俳優たちにより上演され続けています。
CHANELの創始者、ココ・シャネルも愛した椿の花

CHANELといえば、煌びやかで高価なブランドという印象をお持ちの方も多いでしょう。
しかし、CHANELの創始者、ココ・シャネルも椿を強く愛した人の一人です。
かつて、ココ・シャネルは、盟友アーサー・カペルから白い椿をプレゼントされました。彼女は最愛の人から贈られたこの椿をとても大切にし、彼女自身のファッションにも日々取り入れました。
19世紀初頭にフランスで育った彼女にとって、凛とした強さや美しさを彷彿とさせる椿の姿は、まさに彼女が目指さんとする理想の女性像と重なったのでしょう。
当時のフランスでは、女性は家庭を守るべき存在、良き妻、良き母であることが好ましいとされてきました。しかし、自立して新しい生き方をしようとする女性達が出始めたのも同じ頃。現代も何かと話題になりやすい女性達の立場ですが、ココ・シャネルも当時の多くのパリジェンヌと同じように、男性社会の中で女性達の置かれる立場に強く疑問を抱き、彼女達が強いられる窮屈なファッションから解放されるべきだと感じていました。
革新的なCHANELのファッションには、彼女のそうした強い自立心や女性達は自由な存在であるべきいう考えが象徴されています。
シャネルの代表的なコレクションに「カメリア」があります。このカメリアコレクションの椿のモチーフには、日本の原種を採用したとされ、その上品で華やかなコレクションは、世界の女性達を魅了し、また、カメリアコレクションを通じて、今もなお、世界中の女性たちを応援しているようでもあります。
そんな逸話を知ると、また違った目でブランドを楽しむことができますね。
香りはなくとも、愛される椿

椿の花には、他の花のような芳しい香りがほとんどありません。現在も多くの品種が作られており、多少香りのする品種もありますが、ほとんどの種類で香りがないとされています。椿の愛好家の中には、この『香りがない』という特徴を愛している人も多くいます。それはまるで、花にも「何にも媚びない強さや誇り」があるかのように感じさせ、他の多くの花のようにいい香りで誘うのではなく、その佇まいで人々を惹きつけています。
しかし、花弁はしっかりと肉厚で、一枚一枚がぷっくりとしたハートの形をしており、見た目はコロンとした愛らしい花です。咲くときも、広がりすぎず奥行きを感じる開き方をしています。一見地味なようにも見えますが、しっかりと存在を主張し、散り際もまた潔さを感じさせます。散った後に地面に広がる椿の絨毯もまた美しい光景です。