「香りがない」も楽しめると、日々はもっと豊かに
良い香りがあることが良しとされる昨今。好きな香りを楽しむことができるのも、一つの幸せです。
香りを楽しむシーン、香りを必要としないシーン、それぞれを楽しめると日々はもっと豊かになります。
香りが過剰な現代人の日常

今は、どんな製品にも人工的に香りがつけられています。
洗剤やシャンプー、化粧品は香りのつけられていないものを探すのが難しいほど、当たり前のように香りがつけられています。また、家や車に置く芳香剤もかなりの種類があります。洗剤や柔軟剤などは、香りが何週間も強く残る製品もあります。家の中を探してみましょう。たくさんの人工的な香りを見つけるはずです。
そんな現象をもたらす原因の一つに、人から出る匂いに対する対策という点があります。
汗や皮脂の匂い、自分は臭くないだろうか、誰か臭い人がいないだろうか・・・消臭剤や柔軟剤など、香りにフォーカスしたCMが毎日テレビで流れるほど、現代人は匂いにとても敏感です。
周りに不快な気持ちにさせないようにとどんどん強い香りを纏う・・・それは時に過剰になり、そして、その強すぎる香りによって誰かの健康を奪っているかもしれません。
香りがあることの良さと、過剰な場合の心身への影響

確かに、香りは贅沢なものの一つであり、華やかな印象を与えます。いい香りに包まれることは、人を嬉しくさせたり、楽しい気分になったり、幸せな気分にします。
そして、人々が香りを求めるのは、自分を強く印象付けたいという欲求でもあります。
人の心に強く残るのに、香りはとてもいい仕事をするのです。まさに香水は、そういう欲求を満たすための製品です。
香水を纏うだけで、付けている人の気分を舞い上がらせ、あるいはやる気を引き出したり、元気付けたりします。
また、記憶は匂いとセットになるととても印象的になり、人の心にいつまでも強く、それが良い香りであるほど、思い出も良い思い出として記憶されます。

しかしその一方で、実は、たくさんの強い香りによって、ひどい体調不良に悩まされている人もいます。
香りが強すぎると、頭痛や吐き気、眩暈など、日常生活に支障をきたすほどの症状は、化学物質過敏症といい、『香害(こうがい)』とも呼ばれています。どんなものにでも香りをつける、現代の風潮が生み出した病気です。
香りを敏感に感じる方にとって、どこに行っても強い香りがするのは、大変苦痛です。
そういった方は、接する人の使う洗剤の匂いすらも敏感に感じてしまうので、学校に通うことや、通勤、人との交流、日常生活すらも制限されてしまいます。香りは、人の行動を制限したり、人同志の距離を近づけたり遠ざけたりもできるのです。
化学物質過敏症でなくても、人工的な香りにより、体調を悪くしたことがある人は、実は半数以上もいるという結果も出ており、非常に身近な、また誰もがなり得る症状です。
近頃は、香りに対する意識やマナーも取り上げられるようになりました。
香りを楽しむことはもちろん個人の自由ですが、こういった人々の存在にも目を向け、時と場合を選んで香りを楽しむことが求められる時代になってきています。
香りがほとんどないというのは利点
椿には、他の花のように芳しく花らしい香りがほとんどありません。
香りがすることが良いとされる昨今ではありますが、当店のほとんどの商品には香料を使っていません。
もちろんお客様から「化粧品なんだから、いい香りがついていればもっといいのに」とご意見をいただくこともあります。
しかし、私たちは製品に人工的な香りをつけません。
もちろん、椿という花に香りがないこともありますが、一番の理由は、どんな方にもたくさん使っていただきたいから。
そして、「香りがない」という利点を大いに利用して欲しいと思っています。

香りが大好きな方には、その日の気分に合わせて様々なアロマオイルを混ぜたり、自分の好きな香りにして使っていただく。
椿油をマッサージに使うのであれば、エッセンシャルオイルの良い香りや香りによる効果を邪魔をせずに、しっかりと肌を柔らかくし、肌の滑りを良くし、保湿できます。
ヘアオイルとして使うのであれば、他の整髪料やお気に入りの香水の邪魔をせずに、ツヤのある綺麗な髪を作ることができます。
香りの喧嘩をせずに、お使いいただけるのです。
「香りがないのはつまらない」そうお思いの方もいらっしゃるでしょう。
香りにはそれぞれに好みがあります。香りを好きになれなくては、その製品を使い続けることはできません。
香りが苦手な方にも、また香りが大好きな方にも、椿油の本来の良さを知ってもらい、願わくば、ずっと使っていただきたい。
「香りがない」ということを楽しんでいただければと思います。